エンシェント・アロー遺跡の最後の部屋から発見された光ディスク。
そのデータには、科学論文、哲学論文、詩、ヴィジュアルアート、そして音楽データなどが収録されていた。
音楽データには、デジタル化された音楽的表記法、つまり楽譜の形で光ディスクに収められており、さらに各パートを演奏する上で参考となる楽器のサンプル・データまで収録されていた。また、驚くべきことにそのサンプル・データにはヴォーカルのデータすら含まれていた。
エンシェント・アロー遺跡で発見された各部屋には壁画が描かれ、詩や音楽はそれぞれの部屋(Chamber)に対応している。
Wingmaker 音楽 と 詩 (Chamber01~04)
◇Chamber01

「Listening」
私は豹の様に聞き
季節風によって心まで病に犯された身体を切り離す
私が捜し求めた音が押し寄せ
高鳴る心はある種の魔力に満ちていた
それでも私の行きたいという願いは
いまだ高鳴る胸の内にある
心の底で全ての音たちは
追い立てる雑念に背を向け 寄り添い語い
星々の声に耳を傾ければ ざわめきが心を乱す
◇Chamber02

「Language of Innocence」
私の耳が聞こえないのか
それとも 無垢な言葉を話せる者が誰もいないのか?
無垢 それは 言葉が意味を授けられる時 その存在から駆去ってゆくもの
私はそれを見ていた
それを感じていた
私の見上げた瞳が 無垢の棲家を目の当たりにした時
高揚の内に 私はその秘密を解き明かした
そこから目を逸らすことは出来なかった
目を逸らすことなど出来なかった
◇Chamber03

「Half Mine」
私があなたの美を見るとき
あなたが私の半身であることを知る
私たちの魂の切実なる渇きを写し出す
磨き上げられた鏡を持っていない半身であることを
私があなたの瞳を覗き込むとき
あなたが私の半身であることを知る
それこそが私たちの真髄である
官能的な美の軌跡を辿る私の半身であることを
◇Chamber04

「Missing」
あなたがいない新たな夜を迎え
私は自分自身から引き剥がされる
雲の流れの中
海になだれ込む確かな溶岩の流れのような地球の回転の中で
私は自分から引き裂かれる
だが 私が夢から覚めた時
あなたは まだ私から離れたまま
奈落の花束という23の足音の彼方へ
私が東に目を遣るとき
私の滑らかな槌の動きによって
岩盤から削りだされることを静かに待っているあなたを想う